ゾディアック松崎氏と楽器を作り始めて20年、2弦ベースという特殊なタイプまで含めると、そのストックは相当なもの。しかし、僕に根強くあった「PBコンプレックス」は、現実に存在しえない「幻のプレシジョンサウンド」を求め、彼に対して無理な注文ばかり押しつけていました。彼は僕の理解を100%理解しようと努め、それを具現化してきてくれました。けれども最終的に「音」という部分になると、どうしても僕のイメージとは若干の違いが出てしまう。その原因は何なのか、今回このThe Solid Bassを作ってようやく理解できました。
僕のオーダーは「ノーマル」な楽器。特に斬新な形状というわけでもなく、特殊な構造を持つわけでもない、弾きやすく、しっかりとした音の出る楽器。自分の中の「プレシジョン神話」に終止符を打つことで、それすらも超えた楽器を初めて手にすることができたのです。
松井常松